ビールと本と旅とおもしろいこと。

富江弘幸(ビアライター)




見えない価値をクラフトする




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たまには真面目なことも書く私 @hiroyukitomie です。

 

前回に引き続き、「テクノロジーや価値の変革によって変わる考え方と、それがどうクラフトビールに影響するのか」についての論考を書いてたいと思います。

 

目次

 

「新しい考え方」とビール

地方創生、里山資本主義、価値主義、フィンテック……。

 

と、最近のキーワードを並べてみましたが、これらは単独で成り立つわけではなく、それぞれが絡み合った上で進んでいるというのは、なんとなくでもわかっている人が多いと思います。

 

自分も経済の専門家ではありませんので、お金2.0の著者のようなことは書けません。そんな人たちからすると「なんとなくわかっている」レベルでしょう。ですが、ビールのライターとして、ビール関連の現場でこれらの事象が進んでいることを感じています。確固たる理論によって実証するわけでなく、ビール関連で起こっている(起こった)ことを紹介し、日本のクラフトビールが進むべき道を提示したいと考えているのです。

 

私はひとつ仮説を立てました。

 

日本のクラフトビールも地方創生、里山資本主義、価値主義、フィンテックと同じ文脈に乗って発展しようとしているんじゃないか。

 

ということです。

 

仮説とは言っていますが、個人的な希望が多分に含まれています。科学的な考察は希望が入ることで誤った結果を出しかねませんが、ここで伝えたいことは科学的な論証ではなく、日本のクラフトビールを発展させることができればという思いによるものですので、そのまま進めます。

 

身も蓋もないことを書いてしまうと、日本のクラフトビールは日本の話ですので、地方創生、里山資本主義、価値主義、フィンテックなどの文脈で発展しようとしているのは当たり前といえば当たり前のことだったりするんですけどね。

 

ま、とにかく書いていきましょう。いろいろ書きたいことはあるのですが、まだまとまっていないので、書きたいことからどんどん書いていきます。

 

なお、地方創生、里山資本主義、価値主義、フィンテックなどと書くのは煩雑なので、これ以降は「新しい考え方」とします。

 

シェアという言葉の受け止められ方の変化

何から書きましょうかね。まず、最近自分が一番「へえ」と思ったことから書きましょうか。

 

2013年に出版された本ですが、いまさらながら読んだ本からの紹介。里山資本主義です。

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

 


この本で印象に残ったのがシェアという言葉について。同書にはこう書かれていました。

かつては市場占有率という意味で使われてきた。いまは分かち合いという感覚で人々に受け止められている。
(藻谷浩介、『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』、角川書店)

 

これには衝撃を受けましたね。もちろん感覚としてわかってはいましたが、改めて指摘されて気づきました。まあ、2013年に書かれた本なので、5年遅れて衝撃がやってきたわけですが。

 

この文章を読んでいろいろと考えてみたのですが、いまビール業界は「ビール離れ」への対策が叫ばれています。つまりは、売上が下がっているからどうにかしないといけない。最近はクラフトビールが流行ってきているからそれに乗っかろう。という流れで、大手ビール会社から「クラフト」と名を冠した商品がいくつか出るようになりました。

 

しかし、それらがクラフトビールファンに受け入れられているかというと、そうでもない感じがするのです。

 

それはまだ大手ビール会社が「市場占有率」という意味でのシェアを気にしている一方、クラフトビールファンは「分かち合い」という意味でのシェアを欲しているから。

 

向いている方向が違うんですよね。

 

クラフトビールファンからは、「大手がクラフトビールを出すのはおかしい」とか「大手が造るビールは万人受けするものでないといけないからおいしくない」といった意見が聞こえてきます。

 

しかし、そうではないのではないでしょうか。

 

受け入れられるには「分かち合い」という意味でのシェアが必要

じゃあ、キリンビールの100%子会社であるスプリングバレーブルワリーはどうかというと、クラフトビールファンにも受け入れられているのではないかと思います。もちろん、キリンビールとして出すビールよりも万人受けではない方向にできているということはあると思いますが、クラフトビールファンと「分かち合い」という意味でのシェアができているからだと考えています。

 

では、何を分かち合っているのか。

 

単刀直入に言いますと、「金銭換算できない価値」です。

 

例えば、ついこの前リリースされたスプリングバレーブルワリーのビール「磯崎さんちの小田原みかん」。このビールには、見えない価値があります。

 

この磯崎さんというのは、小田原でみかん農家を営む磯崎さんのことですが、ビール好きで「磯崎さん」と聞いたらピンとくるはずです。

 

そう、キリンビールの磯崎功典社長。

 

この事実だけでちょっと飲んでみたいと思いませんか? これが目に見えない価値です。スプリングバレーブルワリーは見えない価値をビールに転化し、それをシェアしているのです。

 

このように、目に見えない価値をクラフトするかどうかが、クラフトビールファンに受け入れられる大前提のように思える、というのが今日のお話。

 

私からは以上です。本日はありがとうございました。 

究極にうまいクラフトビールをつくる キリンビール「異端児」たちの挑戦

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